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2014年 3月20日
Vol. 3 SONY HDR-PJ790Vのレンズは「ズームレンズ時々バリフォーカルレンズ」です |
【2014/6/16 追記】
■HDR-PJ790Vにて、ズーム操作に伴ってフォーカスが大幅にズレる現象が出た際の対応策→電源を切り、15秒程度待って電源を再投入する。
バッテリーの取り外しは必要ないようです。電源を切っても5〜10秒ほどは内部的にシャットダウンが完了していないようで、慌てずに完全に電源が切れるのを待つのがポイントでした。
シーンセレクトが「オート」の場合、数メートル以上離れた被写体を撮影しているにもかかわらず左上にチューリップのアイコンが出ていると、症状が出ている可能性が大です。
Vol. 1でご報告したとおり、HDR-PJ790Vにてたまにズーム操作に伴い大きくフォーカスがずれる現象がAF・MF共に発生することがあったため、修理に出しておりました。
実は2月中に修理されずに戻ってきておりましたが、ともするとカメラ本体の設計ミスかもしれない今回の現象を、波風たてずに的確かつ簡潔に報告する自信も時間もなかったので、報告しそびれておりました。
廉価な家庭用カメラに過度な期待は禁物ですが、今回の件は家庭用とはいえ少々度が過ぎている不具合だと思いますし、むしろ家庭用だからこそ大事なオートフォーカスに関わる問題だと考えております。
正確に時系列にそってメーカーとのやりとりを解説するとかなりの長文になってしまうため、概要だけのご報告にとどめておきます。
まず結論のご報告です。
「HDR-PJ790Vは、たまにズーム操作に伴ってフォーカスが大きくズレる状態になりますが、それはSONYが認める性能の範囲内です。SONYの従来機種では起きない現象ですが、PJ790Vではたまに発生することがあります。
この現象が出ると、AFならばズーム操作のたびにフォーカスがズレ、少し合焦に時間がかかるようになります。MFでは、実用上ズームが使い物になりません。テレ端でフォーカスを合わせればズーム全域で被写体にフォーカスが合うというビデオカメラの常識が通用しないからです。
SONYは、ズームしてもフォーカスがズレないズームレンズを搭載しているとはどこにも書いていませんから、これは不具合とは認められません。
この現象がどのような場合に発生するかは、SONYは公表していません。運次第です。しかし、私が調べた範囲では、ユーザーの努力で回避することはできそうです。なぜなら、この現象は電源を入れた直後に発生しているようならば電源を切るまで症状が出っぱなしであり、電源投入直後に発生していなければ、電源を入れている間は発生しないと考えられるからです。
また、「微妙にズレる」ということもなく、症状の出る・出ないがはっきりしています。
PJ790Vユーザーの方で、ズームしてもフォーカスがずれにくい(SONYの従来機種と同等のフォーカス性能で)映像を撮りたい場合は、電源を入れたらまず数メートル先の被写体に向けてワイド端とテレ端の間を何度かズームイン・アウトして、フォーカスの動作に異常がないか確認してください。もしフォーカスが大きくずれるようであれば、一旦電源を切ってバッテリーを取り外し、数秒待ってバッテリーを取り付けて電源を入れ、もう一度ズームイン・アウトをしてフォーカスを確認してください。
一度では直らない可能性もあるので、だめならもう一度試します。
正常に動作していても、電源を切って再び電源を入れ直すと異常な状態になる可能性があるので、電源を入れ直すたびにズームイン・アウトでフォーカスがずれないか確認する癖を付けましょう。
しかし、そもそもSONYはズーム操作に伴う大きなフォーカスズレを不具合と認めていませんから、SONYはこの回避方法に関してはノーコメントです。私もこの回避方法に責任は持てません。」
ではここから、もう少し詳しく記載してゆきます。
まず、SONYからの公式な回答は「本体に異常はありません」という内容でした。詳細は請求明細書をご参照ください。
写真1 請求明細全体
写真2 請求明細の一部抜粋
内蔵データの蔵が臓になっていたり、遠景撮影時が遠足撮影時になっているなどの誤字は、とりあえず無視しましょう。
この明細を見る限り、カメラの設定をマニュアルにしていたのが原因のように読み取れますが、それは大きな間違いです。参考のため、修理の際に私が添付した不具合内容の説明書きの写真も掲載いたします。
写真3 修理の際に添付した不具合内容の簡易的な報告書
この請求明細書の記載内容には驚いたとともに、少なからず怒りの感情もこみ上げてきました。なぜなら事前にSONYからいただいていた電話にて、本当の内容を聞いていたからです。以下に電話にて受けた説明の内容を記載してゆきます。
まず、指摘した症状はメーカーでも確認されていました。原因が手振れ補正の機構にあることも特定したそうです。
たまにしかこの現象が起きないのは、手振れ補正機構が「ある状態」になったときのみ発生するからなのだそうです。これは故障ではなく、どのPJ790Vでも発生しているものであり、修理はできないとのことでした。
ここでひとつ疑問が生じます。症状が確認できて原因も分かっているのに、公式な報告書である請求明細書には「ご指摘症状が再現致しません」と書かれているのは何故か。
これについては、お電話で対応してくださった担当者さんから回答を得ています。まず、お電話で対応してくださっている方は修理担当とは別部署であり、この請求明細書の記載内容も把握されていませんでした。
私からの問い合わせの後、請求明細の内容を確認した結果、確かにこれでは“意味が分からない”と判断し、この報告書を書いた担当者から事情を聞き出してくれたそうです。
報告書を書いた部署の見解では、「フォーカスがズーム操作でずれる現象は確認したけれども、SONYとしては性能の範囲内なので不具合ではない。不具合ではないから不具合として指摘された症状は再現していない」ということだそうです。
つまり、SONYが不具合と認めるような症状でなければ、例え指摘した症状を確認しても「症状再現せず」という報告になるのだそうです。
今回私が経験したように、MFにて被写体にテレ端でフォーカスを合わせ、カメラも被写体も動いていない状態でもワイド端までズームアウトしたらフォーカスが完全にボケてしまうのは、SONYとしては正常動作なのだそうです。
私は大きな勘違いをしていました(皮肉です)。私は、ビデオカメラをマニュアルフォーカスで使用する際には、テレ端でピントを合わせるのが常識だと思っておりましたが、PJ790Vではそうではないそうです。
その根拠ですが、担当者曰く、「説明書やカタログなどには“カメラと被写体の距離が変化しない場合は、ズームしてもフォーカスがずれません”とは書いていない」ということだそうです。
ズームレンズの定義は「焦点距離を一定の範囲で自由に変化できるもの。その際ピント位置の移動が生じないものをズームレンズ、生じるものを可変焦点レンズ(バリフォーカルレンズ)という。(Wikipediaより引用)」なので、PJ790Vのレンズは「たまにズームレンズではなくバリフォーカルレンズになる気まぐれさん」ということになります。
この「説明書やカタログなどには“カメラと被写体の距離が変化しない場合は、ズームしてもフォーカスがずれません”とは書いていない」という説明は、SONY担当者も屁理屈だと自覚はされているようで、苦しい弁明であることは口頭で認めていました。また、当然ですがSONYがこれまで販売してきたビデオカメラではこのような現象は発生しないことも認めています。
さて、請求明細書によれば「カメラ設定がマニュアルの為、今回ご指摘症状になっておりました」と書かれていますが、私がこの症状を見つけたきっかけはオートで使用中に極端にピントが合いにくくなったからです。
この点についてSONYの見解は、「この現象が出てしまった場合でも、オートであればズレたフォーカスがその後自動的に合うので、ピンぼけ映像のままにはならないから解決」ということだそうです。
カメラの設定がオートであって、カメラと被写体の距離関係が変わらない状態で撮影中も、この症状が出ている間はズーム操作で必ずフォーカスがズレるわけですが、これも性能の範囲内と明言されています。
先に書いた通り、従来のSONY製品ではそのような現象は起きないことも明言されていますから、従来の機種よりもフォーカス性能が大きく劣る場合があることを認めていることになります。また、この症状は撮影状況に依るものではなく、手振れ補正機構が「ある状況になったとき」に発生するものなので、どのようなときに発症するかと問われれば「運が悪いとき」としか言いようがありません。
手振れ補正のON・OFFどちらでも発生する可能性があるということはSONYが認めてます。
あくまで担当者の個人的な考えと前置きした上で、「不具合ではないかというお客様のご指摘はその通りだと思う」という趣旨の言葉もありました。
メーカーとしては認められないものの、現場の社員は設計ミスであることを自覚されているのだと思われます。
ユーザーが「これは不具合じゃないの?」と言っても、メーカーが「性能の範囲内」と言う限り、それは不具合ではないということは、企業がとるべきスタンスとしては正しいものなのでしょう。それは私も理解できました。今回の件を不具合と認めれば、それは設計ミスを認めることとなり、欠陥品を市場に出したことになってしまうのですから…。
幸い、アマチュアカメラマンからすれば「ずいぶんピントが合いにくいなぁ」と感じる程度で、「あとでちゃんと調べてみよう」と思ってもそのときには直ってしまっていて、カメラの不具合とは思われずに済みます。
家庭用カメラなのでプロの仕事で使われることは無いでしょうから、原因を特定される心配も少ないのでしょう。仮にプロの仕事で使われるとしても、それはピントのズレなど気にしないサブカメ程度のものでしょうから、原因を追及される心配もありません。
この現象で一番被害を受けるのは、お子様の成長記録を撮影するような客層ではないかと思います。
幼稚園の学習発表会などで運悪くこの状態になってしまった場合、ステージ全体から我が子にズームイン、そして我が子の寄りからステージ全体にズームアウトすると、その度にフォーカスが合わなくなります。
ちょっとカメラに詳しいビデオパパが、「舞台撮影ならMFだよね」なんてことをしたら、ズームするたびにピント合わせ直しです。
ワイド端で遠くはなれたステージにピントを合わせて0.2mなんて距離表示を見たら、ちょっと驚いてしまいそうです。
遠視などで少し視力に自信が無かったり、カメラの荒い液晶画面でワイド端のピントなど確認できないからと、テレ端でピントをじっくり合わせてフォーカス固定という玄人的な使い方は、PJ790Vではもちろんできません。SONYがそう認めているのですから間違いありません。
とはいえ、この症状はいつも出ているわけではないので、コツをつかめば回避することはできそうです。
私が調べた範囲では、この症状が出てしまった場合は電源を切ってバッテリーを取り外し、数秒待ってバッテリーを取り付けて電源を入れると解消しました。また、単に電源を切って数秒後に再投入しただけでは解消しない場合があることも確認しております。
電源を切って10秒程度は完全にシャットダウンされておらず、その間に電源を再投入しても改善しないというのが実情のようです。耳をカメラに近づけてよく聞くと、電源を切っても5〜10秒程度は小さな動作音が聞こえます。その後、「コトン」とレンズ部分から音が鳴り、その時点でシャットダウンが完了しているようです。それを待って電源を再投入すると、たいていの場合解消されるようです。【2014/6/16加筆・修正】
そして、この症状が出る・出ないははっきりしており、症状が出ているときははっきり分かる程度の症状であり、出ていないときは実用上全く問題無い状態です。
その中間の、「微妙にずれる」という現象は、今のところ確認していません。
この現象が手振れ補正機構にあることを把握しているSONYならば、もっと効率的な回避方法を把握しているのかもしれませんが、この現象を「不具合」とは会社として認められないという理由で、回避方法も「ご案内できない」とのことでした。
私自身はこの件でSONYを責める気はさらさらありません。ただ、他のPJ790Vユーザーが、大事な撮影でピンぼけ映像を多発させない為にも、使用上の注意として説明書のマニュアルフォーカスの項目やウェブサイトに記載するべきなのではないかと思っており、その旨はメーカーにお伝えしました。
実際に、私のPJ790Vを使用して数十時間の記録撮影を行ったフリーディレクターさんの撮影映像を確認したところ、所々でズームのたびにフォーカスがズレる映像がありました。人物にズームインして大きくフォーカスがボケて、慌ててズームを引いたカットがいくつもありました。ディレクター氏にはこんなカメラを貸してしまい本当に申し訳なく思っております。
症状が出ている映像は十数カットにわたり連続していることからも、電源を入れている間はずっと症状が出ていることがわかります。
また、今回の一連のやり取りに関して、SONYから口外を禁止されておりません。請求明細に正しい内容を記載して再発行してほしいと電話でお願いした際には、「一度発行した明細は変更できないが、他の人に説明する為にこの電話の内容を録音して聞かせることを止めることはしません」とおっしゃってましたので、会話の内容をこのように公開することも問題無いと考えております。
なお、電話の内容は正確にメモしたり録音したりしておりませんでしたので、会話の内容を一字一句正確に書き起こしてはおりません。聞き間違いや記憶違いによる誤解があり得る旨、ご了承ください。
本記事は、PJ790Vユーザの役に立つようであれば転載や引用を自由にしていただいてかまいませんが、企業や個人を誹謗中傷する目的での転載や引用は固くお断りします。また、画像ファイルのみの転載はご遠慮ください。
最後に、私が昨年6月にPJ790Vを購入して以来、すばらしい手振れ補正効果に感動して様々な制作会社さんや個人の方にこのカメラをお薦めしていました。この現象に気づいて以降は個別に事情の説明とお薦めの撤回をしてまいりましたが、きちんと性能を把握せずにお薦めをしてご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
また、「不具合ではない」という会社の公式見解をふまえた上で、一歩踏み込んで原因などを教えてくれたSONYの担当者の方には大変感謝していることも付け加えておきます。 |
01:04, Thursday, Mar 20, 2014 ¦ 固定リンク
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