Letus35 Extremeとは
写真1 Letus35ExtremeとAG-HVX200の組み合わせ |
難しい光学の話は端折りますが、35mmフィルムカメラと比べ、ビデオカメラはピントの合う範囲が広く(被写界深度が深い)、フォーカスの浅さを生かした演出がしにくくなっています。
これは、撮像面の大きさが異なることに由来し、35mmフィルムと比べて撮像面の小さいビデオカメラでは仕方の無いことです。
これを逆手に取ると、フィルムカメラでは難しかったパンフォーカス効果が簡単に得られるということになるのですが、無い物ねだりというか、どうしてもビデオカメラで浅い被写界深度を実現したいという声があったようです。
そこで考えだされたのがDOF(depth of field 又はdepth of focus)アダプタと呼ばれる製品です。P+S TECHNIKのPro35やMini35が有名であり、Mini35という名称がDOFアダプタの一般名詞であると勘違いしている人も少なくないようです。
基本的なDOFアダプタは、フィルムカメラ用レンズを用いてフィルムと同じサイズのグランドグラスに像を映し出し、そのGGをビデオカメラで"再撮"する仕組みとなっています。
その際、グランドグラス自体の粒状感が映像に出てしまうと都合が悪いので、グランドグラスを回転させたり振動させるなどの工夫がされています。また、スクリーンに投影される像は上下反転しているため、カメラの機能で上下反転させたり、編集時に反転させる必要があります。DOFアダプタによっては、プリズムなどを内蔵し、正像で撮影できるものもあります。
Letus35Extremeは、そのDOFアダプタのひとつです。Letus35は数年前から海外のメーカーで手作りで製造・販売されており、価格は数百ドルと他の35mmレンズアダプタに比べて非常に廉価だということがネット上の掲示板で話題になっていました。初期の製品は良くも悪くも手作り感あふれる外見でしたが、最近では見た目も良くなり、性能も明るさが改善され(スペック上はmini35より明るい)、プリズムを内蔵して映像も反転しないなど、だいぶ良い出来になっています。
Letus35を導入する
写真2 Letus35ExtremeとNewFDレンズ |
Letus35Extremeは、PLマウントの高価な映画用フィルムレンズを使用することもできますが、廉価な写真用の一眼レフカメラ向けレンズ(以下SLRレンズ)も使用することができます。
廉価なSLRレンズとは言っても、新品で沢山購入するとかなりの金額になるため、中古市場で多く流通しているNikonのニッコールレンズかCanonのNewFDの、どちらかを選ぶことにしました。
ニッコールは、現行のNikon製カメラとも互換性があり、品数が豊富なのが利点ですが、中古市場でもやや価格が高く、ピントリングの回転方向がHVX200と逆であるのが少々難点です。
FDレンズは既に生産が完了して現行機種では利用できず、ほかの用途に流用しにくいのですが、中古価格が廉価な傾向があり、ピントリングの回転方向はHVX200と同じということもあり、FDレンズを選択しました。
Letus35を使用する
Letus35ExtremeはDOFアダプタとしては廉価($1,200)な部類であり、比較的手軽に導入できるものではあるのですが、使用にはある程度の技術的な知識と機械の分解・組み立ての腕が要求されます。
まず、購入後に初めて使用する前には、SLRレンズ側のフランジバック調整が正しくなされているか確認する必要があります。その方法はLetus35Extremeのマニュアル(英文)に掲載されていますが、ずれの具合によっては本体を分解しなくてはなりません。この作業でグランドグラスに傷をつけてしまったという報告がネット上の掲示板にいくつか寄せられており、慎重に作業する必要がありそうです。
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写真3 Letus35Extremeの鏡筒を取り外したところ |
写真4 グランドグラスと本体の間隔でフランジバックを調整します。 |
説明書(PDF)のリンク→http://downloads.letusdirect.com/guides/letus35-extreme.pdf
フランジバックの調整を終えたら、取り付け位置の微調整を行います。Letus35Extremeの個体差や、組み合わせるカメラによって、グランドグラスの中心がビデオカメラで撮影される画像の中心からずれてしまう現象が多く報告されています。
その場合でも、ビデオカメラ側のズームで左右の黒みが見切れないところまで寄ることで撮影することは可能です。
しかしながら、SLRレンズの光軸とビデオカメラの光軸がずれているとSLRレンズ本体のビネット(画像周辺部の光量低下)もセンターからずれてしまうなどの不都合が生じます。また、せっかく広角レンズを使っているのに、グランドグラス周囲の見切れをなくすために少しズームするのはもったいないという声も多く聞かれました。
そこで、簡易的ではありますが、グランドグラスを撮影画面のセンターに合わせる方法をご紹介します。これは、Letus35Extreme本体を、スレッドリングに対してあえて斜めに取り付けて、光軸の平行を崩すことで無理矢理センターにしてしまおうという方法です。
写真5〜8は、HVX200とLetus35Extremeの組み合わせで撮影したものです。
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写真5 上下は、ほぼセンター。 |
写真6 左右は、右にずれている。 |
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写真7 左右の黒みが切れるまでズーム。 |
写真8 Letus35Extremeは基本通りに取り付け。 |
ここで、Letus35Extremeをスレッドリングから取り外します。そして、グランドグラスがずれて寄ってしまっている側(今回は画面右側)の取り付け部分に、黒パーマセルを貼ってみます。このパーマセルテープの厚みの分、Letus35Extreme本体が傾いて取り付けられることになります。
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写真9 黒パーマセルテープで厚みを持たせると・・ |
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写真10 スレッドリングに取り付けた際に隙間ができ、平行がずれた状態になります。 |
写真11〜14は、修正後のものです。
このように、グランドグラスの位置がセンターに修正され、その結果0.9倍程画角が広くとれます。
しかしながら実際の運用では、この修正を行った後もHVX200のズームは「Z23.1mm」位まで寄せています。そうすることで、使用中にLetus35Extremeが少しずれたりすることによるケラレを防いでいます。
できるだけ広角を生かしたい場合は「Z20.9mm」まで引き、ケラレが出ないことをモニターで十分確認して撮影しています。
なお、この修正によってLetus35Extremeのグランドグラスを画面のセンターに合わせることはできますが、SLRレンズのイメージサークルのセンターが合っているとは限りません。実際、レンズによってはこの修正を行うことでビネットがズレることも確認しています。
従って、特に問題がなければ、このような細工をせずに使用しています。
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