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不定期連載 小型デジタル映画 VOL.1
自主制作などで学んだことを徒然なるままに・・

デジタル小型映画

2010年2月

はじめに

ノンリニアビデオ編集につきものなのが、レンダリング時間。サブのMacでネットサーフィン(死語?)を楽しんだり、コーヒーを飲んで一休みしたり、明日の仕事の段取りを考えたり…。

そんなときの気分転換ツールとして、なんとなく書くことにしたのがこの連載です。

数年前、camerakun.info内で閲覧数が上位だったコンテンツに、「映像制作技術」のショートムービー関連ページがありました。しかし、公開から数年経過して内容が古くなり、サーバ故障に伴うサイト全面リニューアルを期に掲載を終了しました。今回の連載はその復活版も兼ねようと考えています。

題名の「小型デジタル映画」とは

家庭用ビデオカメラが登場する以前、劇場用の35mmフィルムに対して家庭用の8mmフィルムで作る映画を、「小型映画」と呼んでいたそうです。

それにあやかり、小型のハンディデジタルビデオカメラでつくる映画という意味で"小型デジタル映画"と名付けました。言うまでもなく、"小型デジタル映画"という名称は一般的なものではありません。

hpx175の写真

写真1 小型HDカメラの例(Panasonic AG-HPX175)

2002年に登場したPanasonic AG-DVX100は、初めて24p記録を可能としたminiDV記録のビデオカメラでした。
HPX175はその流れを汲むHD対応P2カード記録専用カメラです。
私が関わる自主制作映画の現場では、このHPX175やその前のモデルであるHVX200をメインカメラとして使用しています。
少し個性的なカメラで、高解像度・高S/Nを追求する作品では使いにくい面があります。

この連載でも、今後ちょくちょく登場する予定です。


hpx175の写真

写真2 小型HDカメラの例(Sony HVR-V1J)

HDV1080i方式で30p・24pプルダウン記録を実現したカメラ。発売当初(2006年12月)はSONYのHDV機器がプログレッシブ記録に対応していなかったので、プルダウン記録はやむを得ない選択だったと想像できます。
1/4インチCMOSで、ややレンズの甘さが気になる面もあり、感度も高くはなく、今となっては特筆すべき点はあまりありません。
プルダウン削除することで24pネイティブ素材として扱うことも可能ですが、動きのあるシーンではダブリ駒部分から作られたフレームがMPEG圧縮による影響を強く受けるというデメリットもあります。また、HDVテープのドロップアウトやヘッドクロッグには細心の注意(OKテイクの再生チェックなど)が必要です。


hpx175の写真

写真3 小型HDカメラの例(Panasonic HDC-TM300)

家庭用のAVCHDカメラ。家庭用ながら24pネイティブ記録が可能という、面白みのある機種。
画質に特筆すべき点は無いのですが、絞り・シャッタースピード・ホワイトバランスなどの設定を手動にすることも可能なので、ちょっとした作品作りにも使えそうです。
今のところ、メイキング撮影に多用していますが、カメラ内蔵のサラウンドマイクが意外と使い物になる音で、雰囲気音を録る程度ならば下手に外部マイクをつけない方が良いかもしれません(ただし、風切りノイズ対策は必要・・)。

 

カメラは小型だけれども撮像素子は大型の一眼レフカメラ

最近、デジタル一眼レフカメラ(一部の機種はミラーの無い一眼カメラ)による動画撮影がにわかに注目されてます。その撮像素子の大きさはフィルム並みの"大型"です。浅い被写界深度が得られるなどのメリットがある反面、静止画撮影のオマケ機能なので動画撮影時の操作性はきわめて悪く、スチル用の高画素CMOSから間引きながら走査しているため、絵柄によっては偽色やジャギーが盛大に発生する場合があります。

私もEOS 7Dを購入してテスト使用してみましたが、様々な問題点をクリアするには小型HDビデオカメラ以上に手間がかかるので、期待を持ちつつ今後の進化を様子見しようとしているところです。

hpx175の写真

写真4 動画対応デジタル一眼レフカメラの例(CANON EOS 7D)

2008年終盤に登場したCANON EOS 5D Mark IIは、35mmフルサイズのCMOSを搭載して1080/30pの動画が撮影可能とあって、映像業界にも大きな衝撃を与えました。

EOS 7DのCMOSは一回り小さいAPS-Cサイズになりましたが、1080/24p・30p、720/60p記録に対応し、そのフレームレートはNTSCと馴染みやすい1/1.001(23.976p、29.97p、59.94p)となりました。

しかし、動画はあくまで"オマケ機能"という位置づけ。

 

小型HDカメラを使うメリット

メリット・デメリットを考える以前に、予算の無い自主制作では低価格のカメラを使わざるを得ない事情があります。単純に画質の面だけで考えると小型のHDカメラでも十分なことがほとんどですが、撮像素子が小さいことによる被写界深度の深さが演出上ネックとなる場合があります。

逆手に取れば、暗くて絞りを十分絞れないシーンでも被写界深度の深い映像を得られるというメリットもあり、フォーカスがシビアではなく、扱いやすいとも言えます。

前述の一眼レフカメラによる動画撮影は、カメラの価格や大きさは自主制作に取り入れられる範囲内ですが、同時録音機能が貧弱であるとか操作性の悪さの面で、撮影時の機動性が悪くなる要素が多くあります。
被写界深度の浅さはフォーカース周りのNGを生み出しやすく、役者の演技がOKでもカメラNGとなる場面が多く出てくる可能性も高くなります。

その点、業務用クラスの小型HDカメラは最初から動画を撮る前提で設計されているので、とても使いやすくスムーズに撮影が進みます。

hpx175の写真

写真5 小型カメラのメリット — 狭い場所でのロケの例

狭い場所では小型カメラの機動性が生きます。

この例は、さっぽろテレビ塔からの夜景収録のため、特別に許可を得て地上約90mの展望台から外に出ての収録でした。

miniDVカメラと小型の三脚を組み合わせることで、狭い足場からのワンマン撮影を安全に進めることができました。

 

小型HDカメラを使うコツ

作品の内容に依りますが、多くの場合に適用できる事柄を挙げてみます。

・NDフィルターを活用して、絞りを開放から1,2絞り程度絞った値(F2.8あたり)を維持する。
→必要以上に被写界深度が深くならないようにする対策。絞り開放ではレンズの性能が十分に発揮できないので、少しだけ絞っておく。

・パンフォーカスが必要な場合でも、絞りすぎない。
→撮像素子が小さなカメラでは、光の回折現象による悪影響を受けやすくなります。小絞りぼけと呼ばれる現象で、画面全体のピントが甘く見えてしまいます。1/3インチの撮像素子を持つカメラでは、おおよそF8程度までと考えるのが無難。

・最初からカメラ位置を決めてズームレンズでサイズを調整するのではなく、演出プランから考えられる背景のぼかし具合やパース感を重視して、ある程度レンズの焦点距離(ミリ数)を決めてカメラ位置を決める。
→被写体のサイズだけではなく、ヌケ(背景)の写り具合も重要な要素なので、単焦点レンズを選ぶような感覚が必要。構図の微調整をズーム機能で補えば、時間の節約になる。

・豊富な画質調整機能を使って、撮影時にある程度の映像のトーンを完成させておく。ただし、やりすぎはNG。
→圧縮記録された素材は、極端な色調整をすると映像が破綻しがち。とはいえ、撮影時の調整が過度になるとポスプロでの処理で融通が利かなくなるので、ある程度余裕を持たせることも大切。特に黒の沈めすぎやハイライトの飛ばし過ぎは修復が難しい。

・レンズ前にフィルターをかける際は、フィルター自身の写り具合に気をつける。
→被写界深度の深い小型ビデオカメラでは、プロミストフィルターなどを使うとフィルター自身の拡散材がぼんやり見えてしまうことがあります。同じ理由で、フィルター表面のホコリや汚れも目立ちやすいので、十分な注意が必要。

 

 


作成 2010.2.20

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