HDR-AS200Vは暑がりの近視!
本体が温まると"前ピン"状態に! 強制録画停止の可能性も
本体が温まると"前ピン"状態に! 強制録画停止の可能性も
SONYのアクションカム、HDR-AS200V。高解像度で美しい「ツァイスレンズ」を搭載していることが謳われていますが、残念ながら高画質・高解像度優先の設計ではないようです。また、使用環境によっては本体の過熱により著しく画質が低下したり、強制的に録画が停止することもあります。
購入直後、USB給電しながら使用中に「HEAT」という過熱を示す警告が表示されました。電源を入れたまま十数分ほど机上に横向きに放置していたことから、内部で発生した熱が逃げなかったのかもしれません。室温は25℃程度で、特に暑い環境ではありませんでした。
高温により問題が発生していないか確認するため、HDMI出力をモニターに接続し、映像を確認しました。その結果、画面全体がかなりぼやけていることがわかりました。
取扱説明書(リファレンスガイド)には、本体の温度が上昇すると画質が低下するという記述があります。高温になることで撮像部の部品が膨張するなどし、フォーカスに狂いが生じていることが考えられます。AS200Vを使用する際は、放熱に関して十分な配慮が必要です。
温度上昇についてのご注意
• ご使用中に本体およびバッテリーが熱くなりますが故障ではありません。
---中略---
• 本機の温度が上昇すると、画質が低下する場合があります。温度が下がるのを待って撮影されることをおすすめします。引用元:SONY アクションカム HDR-AS200V リファレンスガイド
困ったことに、私が購入したAS200Vは「HEAT」表示が出ていないときもピントが甘いものでした。どの程度ピントが甘いのか、GoProと比較してみました。
用意したGoProは、2012年11月発売開始のGoPro Hero 3ブラックエディションです。AS200Vは2015年3月発売なので、約2年半の差があります。技術の進歩を考えれば、後発のAS200Vの方が優れていると考えても不思議ではありません。
2台のカメラができるだけ同じ構図になるよう、画像1-3のようにセッティングしました。どちらも記録モードはHD 1920x1080の60fpsです。AS200Vは手振れ補正ONとし、その画角に合わせるためGoProの視野角は「ミディアム」に設定しました。
電源投入後約5分程度経過した時点で撮影した映像を比較します。気温は測定しておりませんが、半袖では時折鳥肌が立つ寒さでした。
なお、都合によりホワイトバランスは合っていません。
まずは、撮影画像全体を眺めてみます。
AS200Vで撮影した映像は、ビルの壁面や歩道のディテールが表現できていません。画面右手前の木の葉は比較的シャープに写っており、前ピン状態であるように見えます。
GoPro HERO3で撮影した映像は鮮明に見えます。建物外壁や地面のディテールがよく再現されています。
次に、より詳細に比較するため、それぞれの撮影映像から一部をピクセル等倍でトリミングし、比較してみます。
AS200Vで撮影した映像は、典型的なピンボケです。中央にあるテレビ塔の時計表示は、読み取ることが困難です。
GoPro HERO3で撮影した映像は、テレビ塔の時計表示を読み取ることができ、道路や柱の質感も伝わってきます。
AS200Vは"前ピン"であり、人間でいうところの"近視"の状態です。そこで、近視用のメガネをAS200Vのレンズ前にかざして撮影してみました。
眼鏡を併用した撮影画像全体を眺めてみます。
近視眼鏡を併用することで、映像が鮮明になったことが確認できます。一部をピクセル等倍で切り出した画像も見てみます。
GoPro HERO3で撮影した映像ほどの鮮明さはありませんが、テレビ塔の時計表示を読み取ることが可能になりました。
素の状態のAS200Vは、マクロ撮影専用にフォーカスが合わせられていると言っても過言ではない状態です。これでは、流行りのドローンで空撮してもピンボケ映像しか撮れません。ヘルメットなどに装着して至近距離から顔を撮るカメラとしては優れているかもしれません。
これだけピントが甘いと実用的にはないので、メーカー相談窓口に問い合わせのうえ、修理に出しました。その結果ピントが合わない現象がメーカーにて確認され、レンズ部と基板が交換されて戻ってきました。症状が改善されているか確認するため、再びテスト撮影を行いました。
前回と同様、GoPro HERO 3とAS200V、そしてAS200Vに近視用眼鏡をかざして撮影した映像を比較します。それぞれ映像の中心付近をトリミングし、リサイズせずにピクセル等倍で並べたものが画像1-11です。
修理前と比べ、修理後のAS200V(画像1-11中央)はピンボケの度合いが弱まっていることが確認できます。テレビ塔の時計表示はかろうじて読めますので、画質にこだわらない撮影ならば許容範囲と言えるかもしれません。しかしGoPro(画像1-11左)と比較するとピントの甘さが目立ちます。
近視用眼鏡をAS200Vのレンズ前にかざして撮影した映像(画像1-11右)は、GoProの映像と遜色がない程度までピントが改善されます。
なお、画像1-11は、GoPro、AS200V共に電源投入から10分近く経過したときの撮影映像です。電源投入直後のAS200Vはもう少しシャープな映像ですが、2,3分経過すると前ピン傾向が強まってきます(気温25度程度の場合)。GoProは時間経過でフォーカスがずれることはありません。
このテスト結果の画像をメーカー相談窓口に提示したところ、もう一度本体を確認したいとのことで再度修理に出しましたが、「異常なし」で戻ってきました。
AS200Vは廉価な価格帯で「アクションカム」として販売されているものなので、アクションの無い静止した撮影条件でピントを評価すること自体が相応しくないのかもしれません。アクションカムとして想定される使用用途を考えれば、映像品質の追及よりも筐体の大きさや形を重視していたとしても納得できます。
という使い分けをしようと考えています。
【お知らせ】このページは、2015年7月15日に初稿を掲載して以降、修理経過など随時更新してまいりました。経緯の記述などで内容が長く読みにくくなってまいりましたので、同年8月末にメーカから最終結果が出たことを機に、全面改訂いたしました。