LUMIX GH5Sの音声入力
外部機器と組み合わせた際のレベル調整
DMW-XLR1を用いた音声収録
DMW-XLR1を用いた音声収録
GH5SとDMW-XLR1を使用するにあたり、基準レベルやレベルメーターについて疑問が生じましたので、調べたことをまとめました。結論から書くと、DMW-XLR1を用いることで「+4dBuのラインを受けて-20dBFSで収録する」という従来からの手法が、問題なく行えます。
まずは、GH5S本体のマイク端子について簡単に調べてみます。GH5S本体の3.5mmステレオマイク端子は、マイクレベル(プラグインパワー 有・無)とラインレベルの切り替えが可能です。適切なケーブルを用意することで、外部機器からの音声入力を容易に行えます。
MIC・LINEそれぞれの基準入力レベルは取扱説明書の仕様欄に記載されており、コンシューマー機器で一般的に用いられるレベルであることがわかります。
基準入力レベル / マイク入力: -55dBV, ライン入力: -10dBV
引用元:DC-GH5S 取扱説明書
基準記録レベルの記載はありませんが、-10dBVの信号を入力すると-12dBFSで記録されますので、基準記録レベルは-12dBFSであることがわかります(画像2参照)。
基準記録レベルを、業務用途で一般的な-20dBFSとする場合には、-18dBVが基準入力レベルとなります。
GH5Sのマイク端子の「最大入力レベル」は説明書に記載されていませんが、基準入力レベル(-10dBV)と基準記録レベル(-12dBFS)と録音レベル設定の下限(-12dB)から、「-10+12+12=14」、つまり+14dBVとなります。業務用機器のレベル表記で用いられるdBuに換算すると、約+16.2dBuとなります。
ここで一例として、『TASCAMのPCMレコーダーDR-701Dのライン出力をGH5Sのマイク端子(ライン入力に設定)で受ける』場合を考えてみます。DR-701の仕様表によると、LINE OUT端子の基準出力レベルは-14dBV、最大出力レベルは+6dBVとなっています。基準レベルと最大レベルの差が20dBであることからもわかる通り、基準記録レベルは-20dBFSです。
GH5Sの録音レベルを標準の「0dB」に設定しているとき、-18dBVの信号を受けると-20dBFSで記録されますので、-14dBVの信号を受けると-16dBFSで記録されます。録音レベルを「-4dB」にすることで、-14dBVの信号を-20dBFSで記録できることになります。
実際に試してみたところ、上記の計算通りの結果となりました(画像3参照)。
業務用音声機材を併用する信頼性が高い音声収録が求められる現場向けに、XLR入力アダプター「DMW-XLR1」が純正品として用意されています。この製品を用いることで、ファンタム電源が必要なマイクを使用したり、平衡(バランス)ラインを受けるなど、一般的な業務用ビデオカメラによる取材と同じ要領でGH5Sによる音声収録が行えるようになります。
また、最高Fs=96kHz 24bitの「ハイレゾ」収録も可能となります(画像4参照)。
※ ただし、S/Nの点などから、24bitの精度を活かした収録ができるのか、少し疑問が残ります。
DMW-XLR1の基準レベルについて、取扱説明書には以下のように記載されています。
基準入力レベル / LINE: 0dBu, MIC: -40dBu
基準記録レベル / -12dBFS (基準入力時)引用元:DMW-XLR1 取扱説明書
INPUTスイッチをLINE、AUDIO LEVEL ダイヤルを基準位置の中央(時計に例えると12時の位置)に設定すると、0dBuの信号を受けたときに-12dBFSで記録されます(画像5)。
業務用機器でおなじみの+4dBuの信号を受けると、-8dBFSで記録されます。
基準記録レベル-12dBFSは、主にコンシューマー機器で用いられます。日本国内の業務・放送の分野では、基準記録レベルは-20dBFSがほとんどです(NHKは-18dBFS)。業務用機器に倣い、+4dBuを基準記録レベル-20dBFSで記録する場合、AUDIO LEVEL ダイヤルを基準位置の中央よりも絞って使用します(画像6)。
画像6の状態で0dBFSまで歪みなく収録するためには、最大+24dBuの信号を受けられる性能が必要となりますが、DMW-XLR1の説明書には最大入力レベルの記載がありません。
そこで、+24dBuの信号をDMW-XLR1で受けてみました。その結果、聴感上歪みは感じられませんでしたので、問題なしと判断しました(画像7)。
なお、基準記録レベルを-12dBFSとするか-20dBFSとするかによる違いですが、基本的には「突発的な大きな音が入ったときのための余裕(ヘッドルーム)をどの程度持たせるか」ということになります。-12dBFSの場合は12dB、-20dBFSの場合は20dBの余裕があることになります。一般的には、接続するミキサーなどの基準出力とヘッドルームを考慮して決めますが、業務用機器では20dB程度のヘッドルームを持たせることが多いようです。
別の見方をすると、-12dBの方が-20dBより8dB記録レベルが高くなりますので、S/N比が稼ぎやすくなるともいえます(回路設計やその他の要因にも左右されるため、必ずしもそうとは限りません)。
GH5Sの録音レベル表示はとてもシンプルであり、dBFS値は0と-12しか書かれていません。そのため、-20dBFSを基準レベルにする場合、ミキサーから1kHz 0VUの基準信号を受けた際に、どこまでメーターを振らせたらよいのかわかりません。
これでは不便なので、GH5SのHDMI出力をビデオ入力ボードに接続し、音声編集ソフトでdBFS値を表示させながらミキサーの1kHz出力を調整する方法で、GH5Sのメーターの各セグメントが点灯し始めるdBFS値を調べました。その結果が画像6です。右端の赤いセグメントとその左隣の間は1dB間隔ですが、そのほかは3dB刻みであることがわかりました。
素材の収録なので、ほとんどの場合は数dB程度の誤差は許容されると思われます。また、DMW-XLR1のAUDIO LEVEL ダイヤルはアナログ的な見た目ですが、内部的には段階的にレベルが変化します(1dB刻みから0.5dB刻み)。そういった点をふまえ、-20dBFSを基準記録レベルとしたい場合は、ミキサーからの1kHz基準信号を受けたときに、画像6の「-22.5dBFS」のドットが点灯し、「-19.5dBFS」のドットが点灯するほんの少し手前あたりに調整すると良いと思います(画像6の状態)。
機材協力:くつした企画