DC-GH6 明るい被写体に発生する横帯状の色付き
〜暗い背景での撮影は要注意〜

原因はイメージセンサーの特性による「性能実力」

2023.7.24作成 2023.8.3更新

本ページは、素早い情報共有のために暫定版を掲載した2023.7.24から、随時更新をしながら公開しておりました。2023.7.27に1回目の大幅な改稿を行いましたが、2023.7.29にパナソニックから「性能実力」である旨返信を頂いたことを受けて、2023.8.3に2回目の大幅な改稿を行いました。


問題の概要

パナソニックのマイクロフォーサーズ最上位機種である、DC-GH6。小さなボディにたくさんの機能を詰め込んだ素晴らしいカメラですが、その映像の入り口である「Live MOSセンサー」に、ちょっとした弱点があることがわかりました。

その弱点は、

『撮影条件によっては、明るい被写体の左右に「帯状の"色付き"」が発生することがある。

というものです。

パナソニックからの回答で、原因は「DC-GH6で使用しているイメージセンサーの特性に起因する性能実力であることがわかっています。大変残念な弱点ではありますが、「機材の弱点を把握して、制作する作品に合った対処をする」 ことも、カメラマン(技術部)の役割だと思います。

症状の詳細と発生条件

この症状は、「暗い背景」で「明るい被写体」を撮影するときに発生します。

まずは[画像1]をご覧ください。

画像1 DC-GH6を用いて、標準的なビデオトーンの「709ライク」で撮影した動画から切り出した静止画。

[画像1]のデスクライトの発光面部の左右をよく見ると、うっすらと緑色の線が発生しています。暗い部分なので、画像を表示している環境によってはほとんど見えないかもしれません。

しかし、モニター環境によってはこの症状がしっかり目視できる可能性があります。その一例が、「家庭用液晶テレビ」での表示です。

DC-GH6のHDMI出力を家庭用液晶テレビに接続して表示している様子を、スマホ(iPhone SE 第2世代)の背面カメラ & 純正アプリで撮ったものが、[画像2]と[画像3]です。

画像2 [画像1]の動画を撮影中に、GH6のHDMI出力を液晶テレビに接続して表示している様子を、スマホのカメラで撮影した画像 。
画像3 [画像1]の動画を撮影中に、GH6のHDMI出力を液晶テレビに接続して表示している様子を、スマホのカメラで撮影した画像 。

iPhoneのカメラが肉眼より明るめに写していることと、液晶画面に対して少し斜めから撮っているので黒浮きしやすい条件ではありますが、それにしても許容し難いレベルの緑線が見えます。

この現象の興味深い点は、[画像4]のように比較的明るい部分では症状が目立ちにくいことです。そのため、全体的に明るい映像でこの現象が問題になることは、ほとんど無いと考えられます。

画像4 GH6のHDMI出力を液晶テレビに接続して表示している様子を、スマホのカメラで撮影した画像 。

フォトスタイルやISO感度設定、そして被写体の明るさなどによって、症状も変化します。DC-GH6を用いた作品制作を計画されている方は、事前にテスト撮影を行い、この症状がご自身の作品制作で問題になるか否かご確認いただいてから本番撮影に臨まれることを、お勧めいたします。

なお、パナソニックの回答によると、「ダイナミックレンジブースト」を「ON」にした方が、症状が軽減されるようです。

この症状に気づいたきっかけ − 小劇場の舞台を利用したV-Log収録 −

余談がてら、もう一つの例としてV-Log撮影した素材に症状が出ている様子をご紹介します。

私がこの症状に初めて気づいたのは、ある教材用ビデオの制作で『小劇場の舞台』のシーンを撮影したときでした。権利の都合上、演者が写っていない空舞台の映像を用いて説明を進めてゆきます。

[画像4]は、V-Log収録した素材です。右下の白い箱に対して症状が発生しており、よく見ると画面左右の暗幕の部分にて、白い箱と同じ幅でうっすらと質感が変化していることがわかります。

この白い箱の明るさは、一番レベルが高いRchで10bit CV 700程度(ビデオレベル 70%程度)であり、クリップするまでには余裕があります。

画像4 無変換の素材。白い箱に対して、横方向にごく僅かに明るい帯状の輝度変化が確認できます。※表示環境によっては確認できないかもしれません。

[画像5]は、V-Logの素材をRec.709に変換した画像です。ご覧の通り、白い箱は白飛びしておらず、表面の質感もしっかり表現された「普通の白いもの」として見えています。

この画像からは、「帯状の"色付き"」はほとんどわからないかもしれません(ご覧になる表示環境によっても異なります)。私自身も、この静止画だけ見た場合には何ら問題はないと判断してしまうかもしれません。しかし、白い衣装を着た演者が動き回るなど、「帯状の"色付き"」に動きが出てくると、気になってしまいます。

画像5 BT.709に変換した素材。大型液晶テレビなど暗部が若干浮き気味のモニターや、暗部の階調がよく見える視聴環境では、白い箱に対して横方向に僅かな輝度変化と薄いマゼンタ被りの帯が見えます。※表示環境によっては確認できないかもしれません。

[画像6]は、本ページへの掲載のためにノイズを強調した画像です。調整箇所は、画像下段にあるDaVinci Resolveのカラーページにて赤い四角で囲んだ、3つのパラメーターのみです。

画像6 BT.709に変換したうえで、ノイズが目立つよう「シャドウ」「ガンマ」「オフセット」に調整を加えた素材。横帯がはっきりと視認できます。

終わりに

この症状に気づいた時は、「ファームウェア Ver.2.3のバグかもしれない」「ひょっとしたら保証期間を過ぎたタイミングで故障したのかもしれない(お金がかかって辛い……)」とも思っていましたが、「性能実力」という回答を得て大きく落胆しました。センサー自体の性能なので、今後ファームウェアの修正で改善される可能性も、かなり低いようです。

故障ではなかったので修理の出費は不要となりましたが、少々後味の悪い結果となりました。

機材協力:くつした企画

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