動画コーデックの選択
フレーム内圧縮とフレーム間圧縮
フレーム内圧縮とフレーム間圧縮
最後は、川の水面です。常に変化する水面はロングGOP圧縮が苦手とする類いの映像ですが、気泡や波の細かい部分の描写はイントラフレーム圧縮にとっても難関です。
画面左上のグラフィック部分が含まれるように一部をトリミングし、ニアレストネイバー法で200%に拡大して各コーデックの画像を縦に並べました。一番上はマスター素材です。
ロングGOP圧縮に向かない素材の代表例にも挙げられる水面の映像は、XDCAM 422 HDとXDCAM EX 35Mには酷です。水面にブロック歪みが散見されます。動画で見ると目立ちにくいのですが、マスター素材と比べるとはっきりと劣化が分かります。
ProRes 422LTはグラフィックにモスキートノイズが見え、水面にもブロック歪みが出ており、ディテールがかなり失われています。
ここまでの実験でわかるように、同じコーデックでも映像の複雑さによって劣化具合が異なります。ここでは、ProRes 422 LTの映像を使って比較してみます。画面左上の一部をトリミングし、ニアレストネイバー法で200%に拡大しております。右側の白枠内の映像が、画面全体の内容です。
画面全体の複雑さに応じて、グラフィック部分の劣化具合が変化しています。これは、画面の複雑な部分の情報を保持するためにビットレートの多くが割かれ、グラフィック部分への割当が減ってしまったことを意味しています。
デジタル放送でバラエティ番組を注意深く見ていると、ベース画面が大きく変化したときにワイプのリアクション芸人さんの顔がブロック歪みに覆われたり、カラフルな板付きのテロップが背景の変化に合わせて濁るような現象が見られますが、それも同じ原理です。
以上の結果から、ビットレートが高いほど映像の劣化が少ないという、当然のことが改めてわかりました。コストと品質のバランスをとるうえで、どの程度の劣化まで許容できるかという点が重要であり、そのジャッジのためには劣化の具合を目で見て確認する必要があると考えています。
今回は1世代のみの検証でしたが、実際の映像制作では収録の時点で何らかの圧縮がされており、白完パケ、テロップ・スーパー入れを別の編集室(会社)で行うことがあったり、そのやりとりでHDCAMテープを経由するなど、数世代のコピーが発生することも多くあります。毎年少しずつ内容を変えて改訂版を作るような作品では、その度に再圧縮やテープコピーが発生するかもしれません。 そのような場合には、可能な限り低圧縮率のコーデック選択を検討する必要がでてくるかもしれません。
様々な場面でより良い判断をするためにも、コーデックの実力を試してみることは無駄ではないと思います。