LUMIX GH4 導入記
高画質HDカメラとしても使える4K一眼
高画質HDカメラとしても使える4K一眼
このページでは、プログレッシブ23.976fpsを24p、解像度1920x1080 FULL HDをFHD、3840x2160 4K UHDを4Kと表記します。
4K動画を撮影可能な一眼カメラとして2014年4月に登場したPanasonic DMC-GH4(以下GH4)。同社AG-AF105(初期型)を愛用する立場としては、現行機種AF105Aの後継カメラの登場を期待しましたが、全くその気配はありません。放送機材展でPanasonicの営業さんに聞いても、期待はできない雰囲気です。
GH4は発売から約半年が経過し、販売価格もこなれてきました。量販店のポイント還元やメーカーのキャッシュバックキャンペーンを併用すると、本体価格は税込み11万円強。別の用事で立ち寄った量販店で、衝動買いしました。 一眼カメラとしては値が張りますが、業務用のシネマカメラと比べれば遥かに廉価なカメラです。入手したからには活用しなければという思いで、テスト撮影を行うことにしました。
外部レコーダーによる低圧縮FHD記録の検証も行いたいと考えましたので、まずはHDMI出力のフォーマットを確認しました。フレームレートが24pのとき、FHDおよび4Kダウンコンバート時のHDMI出力は1080/24pとなり、現在所有しているATOMOS SAMURAI(Connect H2S併用)で記録可能ということがわかりました。FHD 60pは然ることながら、4K 30pダウンコンバートも1080/60pとなり、SAMURAIでの記録は不可能でした。
次に、4KダウンコンバートのHDMI出力ビット数について調べました。Panasonic AG-AF105Aは10bit HD-SDI出力可能ながら、SDダウンコンバート出力が8bitに制限される仕様であり、GH4もダウンコンバート時は8bitになる可能性が0ではないと考えたからです(ちなみに日本版AF105Aのカタログでは触れられていないのですが、海外版AF101Aのカタログには「10 bit signal is generated by smoothing process. It is not a native 10 bit signal.」という記述があります)。
カメラスルーの実写映像を見て8bitか10bitかを見分けるのは至難の業ですが、モニターのWFM機能を使用して10bitの階調が出ていることが確認できました。
テスト撮影は以下のような条件で行いました。
・レンズ: LUMIX G X VARIO 12-35mm
・NDフィルター: Kenko ND100
・感度: ISO 200
・シャッタースピード: 1/50秒(24pでは1/48秒が標準的ですが、人工光源のフリッカー対策のため1/50を常用しています。)
・アイリス: ややアンダーめになるようマニュアル調整
・フレームレート: 24p
・フォトスタイルなど各種設定: 図1-2参照(ポスプロ作業の便宜上、輝度レベルを16-235としています。
一番気になる点であった、FHDと4Kダウンコンバートの画質差を調べてみます。まずは、レンズの焦点距離を変えずに比較してみます。画像1-3は、HDMI(4:2:2 10bit)出力をProRes 422 HQ記録した映像から切り出した画像です。
それぞれの動画を見ると、明らかに4Kダウンコンバート出力の方がきれいに見えます。両者とも画面右側にある階段付近にモアレが発生していますが、FHDでは特に強く出ています。木々の葉や建物の窓など、4Kダウンコンバートの方はくっきり鮮明です。映像の一部をピクセル等倍で切り出して比較した画像が、画像1-4です。
これだけの画質差があると、FHD素材の収録も4Kダウンコンバートを常用したくなります。詳細は次のページで触れますが、4KはFHDより1.2倍望遠寄りの画角になります。そのデメリットを差し引いても、4Kダウンコンバートの画質は魅力的です。
次に、ほぼ同じ画角で比較できるよう、レンズのズームを操作して撮影した画像を掲載します。
この場合もやはり、FHDより4Kダウンコンバートの方がモアレが少なく鮮明な映像になりました。
ここまでの検証で、FHD解像度で仕上げをする場合も、FHDではなく4Kダウンコンバートを使用した方が画質的なメリットが大きいことがわかりました。しかし、わざわざ外部レコーダーを使用して4KダウンコンバートHDMI出力を記録するのは少々面倒です。
そこで、SDカードに記録された4K映像をソフトウェア上でFHD解像度にダウンコンバートした映像も検証することにしました。画像1-8にある三つの素材で比較します。これらの映像は、SDカードへの4K記録と同時にSAMURAIを使用し、4KダウンコンバートHDMI出力(4:2:2 8bit)をProRes 422 HQで同時記録しました。
ダウンコンバートに使用するソフトウェアとして、無償で使用できるDaVinci Resolve Lite 11.1と、After Effects CC 2014.1を選びました。両者とも、ダウンコンバートした映像をProRes 422 HQで出力しました。
「4KダウンコンバートHDMI出力映像」、「After Effectsダウンコンバート(32bit浮動小数点・バイキュービック)」、「DaVinci Resolve Liteダウンコンバート(サイズ調整を最高品質に設定)」の3つから、全く同じ時間のフレームを選び、一部をピクセル等倍で切り出して比較します。
まずは1番目の映像の比較からです。
この映像でおおまかなダウンコンバートの傾向がわかります。4KダウンコンバートHDMI出力が一番鮮明で、次にAfter Effects、そして僅差でDaVinci Resolve Liteが続きます。やはり4Kの圧縮を経ないだけに、4KダウンコンバートHDMI出力は高品質な信号を得られます。
圧縮された4K映像からのソフトウェアダウンコンバートも、FHDでの映像よりはるかに鮮明です。ソフトウェアによるダウンコンバート品質は、使用するアルゴリズムやパラメーターによって変化します。例えば、今回After Effectsではバイキュービックを使用しましたが、バイリニアにすると少し柔らかめな印象になります。同じアルゴリズムでも、ソフトが違うと結果に差が出ることもあるそうです。
次に、2番目の映像です。
モアレの目立つ人工的なものが少ない反面、ススキの穂や木々の葉など、かなり細かい絵柄です。全体的な映像の印象は、1番目と同様の傾向です。ソフトウェアダウンコンバートの映像では、橋の橋脚など滑らかな部分のノイズ粒状感に、IPB圧縮特有の数フレーム単位のカクカク感が少し見られます。
最後は輝く川面です。
この映像はIPB高圧縮には厳しく、細かいきらめきや波の微細な凹凸が4K収録の時点でだいぶ丸められてしまっています。その点、4KダウンコンバートHDMIから収録した映像は、きちんと精細感が残っています。とはいえ、ソフトウェアダウンコンバートの映像単体で見ればあまり気になるほどではなく、ブロック歪みやモスキートノイズは感じられないので品質は高いと言えそうです。
ただし、高圧縮の影響を全く受けていないとは言えません。映像をコマ送りしてみると、ソフトウェアダウンコンバートの映像には水面の平坦な部分がたまにフリーズしているように見える部分があります。HDMI収録の同じ部分をコマ送りすると、平坦なりにきちんと変化があります。これは、IPB圧縮の記録レートが映像に対して十分ではないため、平坦な部分の情報がかなり省略されていることを意味します。
ここで、画像1-11をご覧ください。
平凡な川の風景で、再生すると普通に川が流れている映像が見られます。ところが、ソフトウェアダウンコンバートの映像をよく見てみると、赤丸で囲った部分がコマ落ちしたようにカクカクとした動きになっています。赤丸で囲った部分以外にも、川面の平坦な部分など細かい単位でたくさんの箇所でそのような現象が出ています。動画再生中はほとんど気にならないのですが、この映像の橋脚や橋梁のような平坦な部分では、ノイズの粒状感がカクカクとぎこちなく動いているのが確認できます。
これはソフトウェアダウンコンバートの問題ではなく4K IPB 100Mbps記録の限界です。FHD解像度に換算すると最高25Mbpsというこのビットレートは、AVCHDの1080/24p 24Mbpsとほぼ同じなので当然の結果です。この映像は手前の川面が細かい絵柄で動きも速く、情報量が特に多くなっており、圧縮コーデックには厳しい条件です。自主制作の作品作りでは、このようなシーンはそう多くは出てこないので、深刻な問題ではありません。人物のショットなど背景がぼやけぎみの映像は圧縮しやすいので、問題になることは少ないと考えられます。
素材の品質は高いことに越したことはありませんが、視聴者に届く映像は劇場公開映画など特殊な例を除けば高圧縮記録されたものです。カメラ内の4K SDカード記録でこれだけのHD品質が得られれば、十分満足できます。高圧縮とはいえ4Kですから、いざというときには少しトリミングしても画質が落ちにくいメリットもあります。
最後に、高画質FHD素材を必要とした場合、8bitと10bitでどの程度の差が出るか調べました。非圧縮記録はファイルサイズ的に現実的ではないので、ProRes 422 HQ記録での比較です。トーンカーブでコントラストを上げた際、10bitの方がグラデーションが滑らかになるのではないかと考えていましたが、あまり差はありませんでした。かなりコントラストを強めにしたとき、10bitの方がほんの僅かにノイズのざわざわ感が少ないかな、という程度で、静止画を抜き出しても違いはわかりません。
それはある意味当然の結果です。GH4に標準で用意されている画質設定は、従来から8bit記録のカメラで使用されてきたものが継承されており、8bit記録でも破綻しないようになっています。今回使用したCINE LIKE Dは、カラーグレーディング前提のコントラストが柔らかい設定ではありますが、最近流行のLOG記録と比べればコントラストは高めです。これは後処理の調整幅が狭いというデメリットでもありますが、ある程度撮影時にトーンを確認でき、直感的に分かりやすく扱いやすいともいえます。
あり得ないくらい急峻なトーンカーブにして無理矢理空の階調を上下いっぱいに伸ばしたところ、ようやく10bitと8bitで差が見られました。Premiere Pro CC 2014.1で画像1-11のような極端なカーブを適用し、非圧縮4:2:2 10bitで書き出した映像を比較しました。
10bit HDMI記録は8bitと同時記録できないため、40秒ほど収録時間が異なります。10bitHDMI収録の映像の色調が若干異なるのは、この時間の差が原因と考えられます。10bit収録の方が階調が滑らかです。
なお、8bitの映像をProRes 422 HQ収録すると、圧縮によるノイズが10bitの階調内にちらばります(波形モニターで観測すると、10bit出力の収録と区別がつきにくくなります)。そのため、8bit収録のコーデックで収録した場合とは少し結果が異なります。
10bit出力時は内蔵SDカードへの記録ができず、外部レコーダーだけが頼りとなります。10bit収録で画質が大幅に向上するとまではいえないので、4Kダウンコンバート 4:2:2 8bit HDMI出力をProRes 422 HQ記録し、バックアップを兼ねてSDカードに4K記録を行う方が、安全でメリットがあるように思います。
【2014.11.6追記】
SDカードへの記録中、HDMI出力に接触不良などが発生すると記録動作が止まってしまうことがわかりました。
そのため、HDMI出力を外部レコーダーで収録中にカメラ内SDカードにバックアップ収録している場合でも、HDMI接続した機器側にトラブルが発生するとSDカードの記録も停止する可能性があり、確実なバックアップ収録にはなりません。
参考のため、4Kダウンコンバート4:2:2 10bit ProRes 422 HQ収録した素材から、10bit非圧縮、8bit非圧縮で書き出し、そのファイルに対して画像1-12と同じカーブを適用した映像を比較してみます。原因はわかりませんが、元素材のProRes 422 HQと、そのファイルから10bit非圧縮で書き出したファイルでカーブ適用後の映像に少し差が出ましたので、あえて10bit非圧縮のファイルに書き出してから8bit非圧縮と比較しています。
この比較では、10bitと8bitの違いがよくわかります。
以上で、簡単なテスト撮影の検証結果は終わりです。次のページに、参考として4K記録のクロップファクター1.2倍についての考察やベイヤー配列などについて掲載する予定です。