LUMIX GH6で自主制作
〜導入準備編〜
新機能の確認
新機能の確認
このページでは、GH6について調べたことを随時更新・掲載してゆきます。
2023/7/3、GH6本体のマイク入力端子からライン入力する際の想定外の動作(本来使用できないはずの「録音ゲイン」が、設定変更できないのに設定値が反映されてしまう)について加筆しました。しかし、情報量が多く煩雑になってしまったので、その箇所を別ページに移動しました(2023/7/7)。
DC-GH6ライン入力の罠 〜「録音ゲイン切替」に注意〜 ライン入力にもゲイン切り替えが有効の謎
5.7K 59.94p 10bit 記録、4K 119.88p 10bit 記録……。数年前では考えられなかったような機能満載で、遂にGH6が登場しました。私たちも発売と同時に入手し、今後の制作活動で活用できるよう、現場への導入の準備を進めています。
様々なレビューはネット上の技術系メディアや予算が潤沢なYouTuberさんたちにお任せするとして、本ページでは相変わらず「技術予算ゼロ」の自主制作を基準に、最低限のクオリティを維持して作品作りを行うために調べたり試したりしたことを書いてゆきます。主にV-Log収録を行う前提です。
実際の運用にあたっては、本ページの内容もさることながらネット上の情報は鵜呑みにせず、きちんと検証していただくことを強くお勧めします。
DC-GH5Sでは、バックアップ収録のため2枚のカードに同時収録することと、収録時間とファイルサイズ、そしてコストのバランスから、Sandisk製のSDXC UHS-I V30 128GBをメインに使用していました。ところが、GH6はCFexpressとSDのダブルスロット構成になったため、カメラ内でバックアップ収録を行うためにはCFexpressカードが必須となります。
また、ハイスピード撮影を行う場合にはV30の速度では足りなくなるため、必然的にSDXCカードも高速記録可能なものを用意する必要があります。
私たちが外付けSSDやSDカードを導入する際は、信頼のおけるSandisk製を選ぶようにしています。しかし、Panasonicの公式サイトで「動作確認済みメモリーカード情報」を見てみると、2022年3月8日現在の情報として完全に確認が取れているCFexpressカードはLexar社製のみでした。また、GH6の予約購入特典で後日送られてくるカードもLexar社製です。自主制作でも仕事でも無用なトラブルに悩まされたくはないので、メーカーで動作確認が取れているLexar製のCFexpressカードを用意することにしました。
SDXCカードについてはSandisk製のものも動作確認済みリストに入っていますが、予算の都合で価格が大変お手頃な ProGrade Digital製品を選びました。
GH6には「拡張ダイナミックレンジ」と呼ばれる機能が搭載され、13+STOPのダイナミックレンジを持つようになりました。簡易的な検証では、Log収録以外ではメリットは無さそうでした(厳密な検証はしていません)。
この「拡張ダイナミックレンジ」については、ユーザーの視点から見ると非常に単純な機能(内部処理は高度なものかもしれません)にもかかわらず、ネット上の情報を見ていると適切ではない解釈で書かれている記事もあるようなので、少し注意が必要かもしれないと考えています。
ざっくり表現すると、従来のマイクロフォーサーズ機に搭載されたV-Log Lではギリギリで白飛びしてしまっていた部分を、ある程度白飛びせずに収録できるようになったという、シンプルかつありがたい機能です。内部処理の関係で低輝度部や中間調も若干変化があるようですが、基本的には高輝度部分に影響する機能です。
V-Log収録にて、拡張ダイナミックレンジのON/OFFでどのような差が出るか、検証してみました。
画像3は、V-Log収録した素材をそのまま波形モニターに入力し、波形を観測している様子です。上段の画像は、V-Logのまま無変換でRec.709相当で表示した状態です。フレーム内左端には丸型LEDを多数搭載した小型の撮影用LED照明、その右隣には暖色の電球型LEDランタンを配置しています。
拡張ダイナミックレンジOFFでは、LED照明とLEDランタンの明るい部分がクリップしています。 一方、拡張ダイナミックレンジONでは、LED照明やLEDランタンもある程度階調が保たれていることがわかります。
波形上に記入した赤い2本の線で挟まれた部分が、拡張ダイナミックレンジ機能によってレンジが広がった部分に相当します。
次に、DaVinci Resolveを使用して標準的なトーンのRec.709にグレーディングしてみます。設定の概要は図4の通りです。
演出的なトーンの調整は加えず、Davinci Resolveにて単純にRec.709に変換した結果が画像5です。
SDRのRec.709へV-Logの広いダイナミックレンジを収めようとすると、高輝度域を圧縮する必要があります。そのため、拡張ダイナミックレンジOFFとONの差を波形上で比べると、V-Logの波形(画像3)よりも差が小さくなります。しかしながら、LED照明の発光面やLEDランタンの表面の質感は、このわずかな差の中でも生きてきます。
この結果から、SDRのRec.709仕上げの場合でも、拡張ダイナミックレンジONで撮るメリットがあることがわかります(但し、V-Logで撮影してポスプロでRec.709変換する前提です。)。
次に、ポスプロで「もっと映像を暗くしたい」とリクエストされた場合を想定して、画像6のようなカーブで簡易的に暗くグレーディングしてみます。
その結果が画像7です。
画像7のように、暗くグレーディングする場合には拡張ダイナミックレンジで得られる高輝度部の階調がとても重要になってきます。
拡張ダイナミックレンジOFFでは、クリップしているLED照明のディテールは暗くしても戻ってこないので、平坦な明るいグレーになってしまいます。暖色のLEDランタンの上部も、クリップして明るいグレーになっています。
一方、拡張ダイナミックレンジONでは、LED照明の輝度が高い部分(内蔵している丸型LEDの中心部)はクリップしているものの、ある程度諧調が残っています。また、LEDランタンの暖色も、ほぼクリップせずに表現できています。
私が携わる自主制作作品は、SDR Rec.709での仕上げがメインなので、最終的にはSDRの範囲内にグレーディングすることになります。自主制作ならではの「室内でも照明の制御がきちんと出来ない」「屋外撮影はほぼ成り行き任せ」といった状況では、1絞りでもダイナミックレンジが広くなることはありがたいことです。
というわけで、私たちの自主制作の現場では原則として「V-Log収録にて拡張ダイナミックレンジは常時ON」で運用することにしました。
なお、拡張ダイナミックレンジOFFではISO 2000より低い感度が選べますが、ISO 2000よりISO 1600の方がノイズ感が目立つといった特性もあります。低感度撮影のためにあえて拡張ダイナミックレンジをOFFにする場合には、期待される効果(低感度によるノイズの減少)が本当に得られるか、テストして把握する必要がありそうです。
音声に関して、GH5Sからの変更点として特筆すべき点は、XLRアダプタを併用することで4チャンネルの音声収録が可能になったことです。しかしその他にも、細かい点が改良されてとても使いやすくなりました。
GH5Sでは、録音レベルメーターのスケールが曖昧で、例えば音声スタッフがテストトーンで「-20dBFS」に設定しようとする時など、わかりにくい表示でした。そのため、本サイトではGH5Sの録音レベルメーターの詳細なレベルを検証して公開しておりました。
しかしGH6では、 ピークホールドの数値が表示されるため、素早く的確に外部機器とのレベル調整が行えるようになりました。
現在、私たちの自主制作では外部の音声レコーダーでの収録をメインにしていますが、少人数・小規模のロケではGH6のみでの4チャンネル音声収録が役立つのではないかと考えています。
マイクやミキサーとの接続(特に、カメラ本体の3.5mm TRSジャック)に関してのレベル整合やS/Nなどは、今後検証しようと考えています。
USB給電だけでは動作せず、充電されたバッテリーが装着されていることは必須ですが、USB給電したままカメラの電源をOFFにすると、カメラ内のバッテリーへの充電も可能なので、 私のこれまでの経験から考えると、なんら支障なく使用できると考えています。
今のところACアダプタでのみ動作を確認していますが、近日中にモバイルバッテリーによる動作を検証する予定です。
最近、粗悪品のリチウムイオンバッテリーでの火災が問題になっているようです。これまでも、模造品のSDカードが流通しているなどの問題はありましたが、バッテリーのトラブルは生命の危険や財産の大きな損失を伴う危険があるので、信頼できるメーカーの製品を信頼できる販売店から購入することが重要だと考えています。
以下、随時更新してゆきます。
機材協力:くつした企画